【3Dプリンタ】XYZプリンティング社からda Vinci Jr.ProX+をお借りしました
2021
6/02
どうも、YuTR0Nです。
名前は聞くけど良い噂を聞かないXYZ Printingのda Vinciシリーズ。たしかに私が高校、大学のころは家庭用3Dプリンターといえばda Vinciシリーズみたいな風潮はありましたがあまり性能が良いという噂は聞きません。あくまで噂なんですがね。
そんな話をTwitterでしていたところ、da Vinci Jr.シリーズの最新版であるda Vinci Jr.ProX+ をXYZプリンティング様より貸していただけることに なりました。ProX+という名前はiPhoneのバージョンネーミングに似ていますね。
Jr.ProX+はXYZプリンティングの中ではスタンダードカテゴリーに属するプリンターでオプションでレーザー刻印機能、またカーボンPLAやメタリックPLAが印刷可能となります。デフォルトのノズルだと温度、またカーボン繊維による摩耗が発生するためオプションとしているようですが値段的にはどちらか一方は付属してても良いんじゃないかなとは思います。
楽天で購入するとポイント還元もあるのでさらにお得ですがサポートがつかえるかどうかはXYZプリンティングさんに事前に確認することをおすすめします。
楽天
執筆時点で84,500円(税込み)
※XYZプリンティングさんからはプリンタ本体を貸していただいただけで報酬などは受け取っておりません。ストレートなレビューをお楽しみください。
XYZプリンティング公式サイト
https://www.xyzprinting.com/ja-JP/home
da Vinci Jr.と組立式プリンターの印刷性能以外の違い
まずはもちろん組み立てが不要 なところです。箱から出せば印刷可能、という印象です。
またキャリブレーション機能があるため手動でベッドの調整をすることはありません。レベリングをしっかりと行うためのキャリブレーション作業もありますが手動でのレベリングと比較すると圧倒的に楽です。
ソフトウェア(スライサー)
データをスライス(3Dモデルを印刷するために条件などを決めてプリンター用に変換する作業)するソフトについてはda VinciはXYZプリンティングの自社ソフト「XYZMaker Suite」で行うのに対し、組み立て式のものはUltimaker社のCuraで行うことが大半です。PrusaなどはPrusa Slicerを使うこともあります。
XYZmaker Suite
https://www.xyzprinting.com/ja-JP/software-series/DESIGN/xyzmaker-suite
改造には向いていない
もちろんですが社外パーツで改造する、となるとハードルが高いです。買ったそのままの状態のクオリティで満足する必要 があります。全て筐体自体に固定されかつ入り組んでいるためよく聞くような有名な改造部品の取り付けは困難を極めます。唯一ノズルの換装は可能ですがこちらもKaikaなどを使う必要があります。理由としてはノズルがインチネジ で作られているためです。エクストルーダーをBMGにしたい!などと言ったことはまず無理です。この点は割り切る必要があります。あとはPTFEチューブをCapricorn製にするくらいですね。
静音化は望めない
静音系の改善などはできません。Jr.の動作音は日中でもかなり気になってしまう動作音ですが、残念ながら周りを防音素材で囲む以外静音化は望めません。組み立て式のプリンタはボードを換装したりモータードライバを換装、Crealityなら Creality製の静音ドライバ搭載のボードに換装することで静音化可能ですがda Vinci Jr.Pro X+では不可です。今後XYZプリンティング製の静音換装ボード が出る…ということがない限り。
以前のモデルからの改良点
外観は大きくは変わっていません。Jr. 3 in 1などと比べるとビルドシートの改良、オープンフィラメントの対応が個人的に大きな変更点かなと思います。古い機種でオープンフィラメントを使いたい場合はAmazonで書き換え可能なNFCチップ付のシールを買い、Androidアプリで情報を書き換えてあげるという方法があります。この方法を使えば社外フィラメントでもフィラメントホルダーに収まりさえすれば利用可能です。本体のバージョン?などにも左右されるので試したい方はGoogle先生で探してみてください。
また、金属素材への対応などはデフォルトの状態では対応不可能なので考慮外とします。
印刷してみた
Jr.ProX+の印刷可能範囲は175x175x175mmです。3DモデルをFusion360などを使って作ることも可能ですしMakerbotが運用するThigiverseなどからデータをダウンロードすることも可能です。今回はMakerbotが作ったティラノサウスルスの頭部モデルを印刷してみました。Makerbotも3Dプリンターメーカーです。
バグは多いですが有名な3Dプリントモデル共有サイト
Thingiverse – Digital Designs for Physical Objects
最近流行りはじめ…かけているThangs
Thangs | The fastest growing 3D community | Geometric Search
▼こちらが印刷完了したT-Rex。
積層高さは0.2mmです。また使用したのは純正のPLAです。基本的にはパラメータはインフィルを20%にしサポートをつけたくらいです。
部屋のオブジェにするにはいいかもしれませんが、細かい所のダレや積層のうねりは気になります。印刷してる途中に2回ほどフィラメントが折れたのでかなり吸湿してへたってるのも表面のクオリティと関係してそうです。
サポート部分はSimplify3Dでスライスしたもにに近い感じで出るため剥がしやすいです。
▼積層痕が目立ちがち
Ender-5 Plus VS da Vinci Jr.ProX+
他社プリンターの比較、ということで改造済みのEnder-5 Plus と比較をしてみます。改造内容としてはダイレクトドライブ/オールメタル/リニアレール化/静音ボードへの換装となっています。トータルの金額としては同じくらい なので良い勝負といったところでしょう。
スライス条件についてはどちらも同じインフィル、サポート有り、スピード類はほぼ初期設定です。PLAはPolyMakerのものですのでかなり上質です。また、Jr.はXYZプリンティング製のソフトでスライスするため最適化されているという意味ではかなり有利な条件です。
積層の高さ(レイヤーの高さ)はどちらも0.2mm
Jr.の印刷速度
シェルが30mm/s
インフィルが60-40mm/s
マシンスペック的には160mm/sが最高速度ということですが最適な速度がこの辺り、ということでしょうか。
Ender-5 Plusの印刷速度
シェル80mm/s
インフィルも80mm/s
サポート部は120mm/s
という設定で行いました。
結果発表
撮影環境が少々悪いですが、左と右どちらがどのプリンターでしょうか?上面の様子はどちらもあまり変わりません。こちらはEnder系のエクストルーダーにつけるノブです。
しかし裏面はどうでしょう?裏面はサポートが付属していたためどちらも荒目となっています。しかしよくみていただくと左のモデルはサポートを使うよりオーバーハング部分(空中に浮いてる部分)を気合で印刷している表面性状となっています。垂れている部分もありますね。
次に別のモデルを見てみましょう。こちらはHychika製の電動ドライバーのバッテリーを有孔ボードに取り付けるマウントです。
どちらも物としてはしっかりと機能します。ただ外観的には右の方が綺麗な見た目となっています。
見た目はさておき精度はどうでしょうか?
左は51mm、右は49mmの幅で製作しました。
左は50.71mm、右は48.93mmで出力されました。一般的に大抵の家庭向けFDMプリンターのXY方向の精度は±0.2mmです。製品仕様に掲載されている値がXYの位置決め精度なのか出力品の公差なのかは不明ですが多分位置決めの精度、と思われます。
先程のノブ同様にオーバハング部分も見ていきましょう。左のものは垂れがちであるのに対し右のものは垂れていません。左の方が外周のR部分は綺麗に印刷できていますね。右のものは減速し切れずに印刷したような見た目になっています。
右と左、どっちがどのプリンターか分かりましたでしょうか?
答えは左側のモデルがJr.ProX+、右側のモデルがEnder-5 Plusです。クオリティ、速さ共にEnder-5 Plusに勝敗が上がるのではないでしょうか。
XYZプリンティングのスライサーはオーバーハング部分はサポートなしで印刷する傾向のある初期設定ということがよくわかります。FDMらしい、といえば良いですが見た目の観点で行くとキッチリカッチリと出力されている方が良いです。綺麗に出力するにはいくつか方法があります。
速度を落とす
積層高さを減らす
冷却量を増やす
サポートの条件を変える
もちろんこれを行ったから確実に綺麗に出力出来るとは限りません。例えば冷却量も増やしすぎると層と層の間の接着が弱まり簡単にパキパキ折れるものが出来上がってしまいます。それぞれの条件の組み合わせが重要なので条件を詰める際は複数のパラメータ=条件(速度、風量、加速度など)を一気に変えるのではなく5個パラメータがあった場合は4つは固定条件とし、1個だけを変えてみるというところから始めるのがおすすめです。足し算ではなくそれぞれのパラメータの掛け算 と考えてみてください。
XYZプリンティングのスライサーの設定にも外観の感覚で選べるオプションがあれば良いかもしれませんね。プリンターは組み立て不要で簡単だったけど結局条件出しは必要なのか!となってしまうのが勿体無い気がします。ハードが簡単になってもソフトの部分がわかりずらいままでは良くありません。
もちろん個々のパラメータを細かく設定できる機能は残すべきですが、組み立て不要なプリンタであればもう少し素材ごとの条件を詰めたプロファイルを用意しておくことでよりユーザーが使いやすくなるかもしれません。
スライサーソフトの改良がカギ?
追記2021/06/04
XYZmaker Suiteはもちろん名前の通りXYZプリンティングのプリンター向けのスライサーですが何回か印刷しデフォルトのプリンターはクオリティというより速さ目線の設定な気がしました。
▼サポートが足りていない例
例えばカクカクシカジカしたものや、オーバーハング部分(宙に浮いている部分)が少ないモデルなら割と問題なく初期設定で印刷できます。しかし上記の様に円柱状のものを横向きに置いて印刷した場合、サポートが付く角度がかなり急になってからかつ間隔の空いた設定になっているためかなり底面付近が荒れた仕上がりになりました。この程度のものならサポートが付く範囲を増やしてあげる設定でもそれほど時間も変わりません。ましてやこのクオリティで上がって材料費が浮いたと言ってもあまり嬉しくはないものです。冷却性能が極端に優れていればできるのかもしれない設定ですが、今回はPolymakerのPolyLite PLAのオレンジを使用したので条件としては極上です。
そこでサポートの設定をほんの少しだけ変えてみました。
▼左が設定変更後、右が設定変更前
設定変更後の方がラウンド形状がより綺麗に出力されています。どちらも上側が底面に接していた部分です。ここからも更に条件を詰めることで綺麗に出力してあげることが可能です。
今回変えた条件はサポートの中のサポートの角度設定のみですがここまで改善しました。こう言った設定をより簡単に適用できるようになると便利なのかもしれません。もちろん設定を探すのも醍醐味ですが必ずしもみんながそれを嬉々としては取り組まないでしょう。
設定変更前の中心付近にある線は途中で停電した際の復旧機能でどれくらいのものができるかテストしたものです。やはり急に落ちてしまう故にモーターの位置が若干ずれてしまうもしくは停電後に時間が経つと収縮の関係でズレてしまうのは避けられないのかもしれません。無駄になってしまうよりは良いですね。
総評
安全面でいうとやはりJr.に1票というところでしょう。小学校などに設置するとなると安全面的にはおすすめできます。またJr.ProX+はXYZプリンティングジャパンからの日本語のサポートを受けることができるというところも良いでしょう。
また、工学的な知識のない方にも扱いやすさの面ではおすすめはできます。
ある程度DIYが出来る方や素材の種類を複数試したい方(ゴムのようなTPUなど)や大きなものを作りたい方、性能アップを徐々に検討している方にはおすすめできません。また、静音タイプではないため動作音が気になる場所しか置く場所がないという場合にもお勧めできません。
そもそもProX+が選択肢に入るということは予算もそれなりにあるということなので大きなものを印刷する予定がなければPrusaのMK3Sを買うのがお勧めです。
小物しか作らないけどお安く済ませたい、なおかつある程度いじるのも得意という方はKP3Sなんかがいいかもしれません。こちらは最初から静音ボードを搭載しています。
もう少しサイズが欲しいという場合はEnderを使っていきましょう。Ender-3 V2 なら静音ボードを搭載しています。国内で正規品を購入する方法をまとめてあるのでこちらの記事をチェックしてみてください。PeachCloverについては正規と書かれているものの不明です。静音ボードを搭載していないモデルでも基本的にEnder系CR系は静音ボードが用意されているのでそちらを購入することで静音化できます。
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